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生成AIを業務で使えない本当の理由 — AI導入の前に必要な「データの整備」

「ChatGPTを試してみたら、驚くほど賢かった。それなのに、自社の業務に使おうとすると、途端に役に立たなくなる」——最近、こうした声をよく聞きます。

一般的な質問には流暢に答えるのに、「うちの商品Aの現行価格は?」「この顧客との過去の取引条件は?」と聞くと、答えられないか、もっともらしい間違いを返してくる。「AIはまだ実務では使えない」と結論づけてしまう前に、一度立ち止まって考えたいことがあります。

多くの場合、原因はAIの性能ではなく、AIに渡す側のデータにあるからです。

賢いAIが、自社の質問には答えられない理由

生成AIが学習しているのは、世の中に公開された一般的な知識です。御社の商品構成も、価格の決まりも、顧客ごとの取引条件も、過去の対応履歴も、AIは一切知りません。知らないことを聞かれたAIは、黙るか、それらしい推測(いわゆるハルシネーション)で埋めます。

つまり「AIが賢いかどうか」と「AIが自社の業務に答えられるかどうか」は、別の問題です。後者を成立させるには、自社の情報をAIに渡す必要があります。

社内データをAIにつなぐ、という発想

そのための代表的な仕組みが RAG(検索拡張生成)と呼ばれるものです。名前は難しそうですが、やっていることは単純です。

質問が来たら、まず社内の資料やデータベースから関係する情報を探し出し、それをAIに手渡したうえで答えさせる——「AIに社内資料を持たせてから答えさせる」仕組み、と考えてください。これがうまく動けば、AIは自社の商品・顧客・業務ルールを踏まえた回答を返せるようになります。

問題は、ここから先です。

多くの会社がつまずくのは「渡せるデータがない」こと

RAGの仕組み自体は、いまや珍しい技術ではありません。それでも成果が出ない会社が多いのは、探す元になるデータそのものが整っていないからです。たとえば、こんな状態です。

  • 同じ顧客が「株式会社山田」「(株)山田」「ヤマダ様」と3通りの表記で登録されている
  • 最新の価格表がどのExcelファイルなのか、誰も断言できない
  • 商品情報が、受注表・在庫表・カタログ原稿にそれぞれ書かれていて、微妙に食い違っている
  • 大事な取り決めが、個人のメールやメモの中にしかない

元のデータが矛盾していれば、そこから探して答えるAIの回答も矛盾します。食い違う2つの価格表があれば、AIはどちらかを(ときに古い方を)自信満々に答えます。AIは魔法ではなく、渡された情報の範囲でしか正しくなれない——これがAI活用の、地味ですが動かせない前提です。

AIの答えの質は、「AIの素」で決まる

私たちは、整理され一元化された業務データのことを「AIの素」と呼んでいます。料理にたとえるなら、AIモデルの選定やプロンプトの工夫は調理の腕前で、データは素材の下ごしらえです。下ごしらえができていない素材は、どんな腕前でも良い料理になりません。

逆に言えば、データさえ整っていれば、AIの技術は今後も勝手に進化していきます。モデルは差し替えられますが、御社固有のデータは御社にしか整えられません。AI活用の投資として最も確実なのは、実はこの部分です。

では、何から始めるか

大がかりな話に聞こえるかもしれませんが、手順そのものはシンプルです。

  1. データの棚卸し — 顧客・商品・受発注・価格などの情報が、いま「どこに・どんな形で・誰の手元に」あるかを書き出す
  2. 「正」を決める — 顧客情報ならここ、商品情報ならここ、と「正しい置き場所」を1か所に決める(私たちはこれを創業以来「ワンソース・マルチユース」と呼んでいます)
  3. 構造を整える — 重複と表記ゆれをなくし、Excelの寄せ集めではなくデータベースとして持つ

3番目の「構造を整える」の中身は、データベース設計でいう「正規化」という考え方です。これは別の記事で、Excel管理の例を使って専門用語なしに解説しています。

この整備は、AIのためだけではない

見落とされがちですが、データの整備はAIの準備であると同時に、今日の業務改善そのものです。情報の置き場所が1か所に決まれば、二重入力が消え、転記ミスが減り、「あの数字どこだっけ」と探す時間がなくなります。

つまり、いま業務を楽にする投資と、これからAIを使えるようにする投資は、同じ一つの投資です。AIブームが来る前から業務システムの世界でやられてきた「データの一元化」が、そのままAI時代の土台になる——だからこそ、流行に振り回されずに取り組む価値があります。

まとめ — 「AIをやる」より前に、「AIが使えるデータ」を

  • 生成AIが自社の質問に答えられないのは、AIが自社のデータを知らないから
  • 社内データをつなぐ仕組み(RAG)はあるが、元のデータが散在・重複・表記ゆれの状態では精度が出ない
  • AIの答えの質は「AIの素」=整ったデータで決まる
  • データの整備は、今の業務を楽にしながら、同時にAI活用の土台になる

「AIで何かやりたいが、何から始めればいいかわからない」という場合、最初の一歩はツール選びではなく、自社のデータの現状を見ることです。


カロニマは、散らばった業務データを一元化し、データベース・業務システムを設計・構築する会社です。整ったデータが、いまの業務を回し、これからのAIの土台になる——創業2013年から一貫して、この仕事をしています。「うちのデータ、AIに使える状態なのか?」という段階からで構いません。データの課題を、無料でご相談ください。